市民ランナーのキャリア

市民ランナー川内君が有名になるにつれ、
僕も彼と同じく学校事務の仕事をしていたことを知る人が
僕との会話の中で川内君のことを話題に出してくれることが多くなった。


中には川内君と知り合いなの!?
と少し興奮気味に聞いてくれて、
(行政職として入庁し教育局に配属という意味で直の後輩ではあるのだが、残念ながら面識はない)
もし知り合いだったら紹介してくれとか頼まれちゃうのかな、というくらいな方も。
もし自分に有名人に知り合いができたときに
ありうる周りのひとつのリアクションと言うのはこんな感じなのかな、と苦笑い。


メディアとかで色々と彼について取り上げられていることは多いようだし、
勤務先である学校への取材とかもされているようではありますが、
(もし内部の人以外でこのブログを読んでくれている人がいらっしゃれば)ニーズはある話だろうし、
彼の県職員としてのキャリアについて少し。


と思ったら東京マラソンで彼がブレイクした際にそういえば少し書いていました。
http://d.hatena.ne.jp/scoolforsaitama/20110302/1299067736
昨年度の3月なので、私も学校事務職員だったときです。

当時学校事務職員の立場について少し書いて、
県職員の採用、配属について簡単に書きました。


その記事を書いた少し後に地震が起きて、
自分の無力感が昂じてこんな文章もまとめました。

http://d.hatena.ne.jp/scoolforsaitama/20110318/1300459131

人事や財務の裁量・権限の配分など、県という広域行政の運営について、
教育行政の分野で自分のわかる範囲でまとめました。


当時まとめた組織のガバナンスの話は、
3年間学校現場で、教室で教える立場でなく
事務室から学校経営の側面から携わってきたことで培った問題意識を元に書いたもの。

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少し話それますが、事務室の職員が学校「経営」なんて大げさじゃん?
て読んでて感じた人、いません?


実際に私がやっていたことといえば確かに経営なんて言葉にそぐわない類の仕事でしたが、
例えば東京都の学校は「事務室」という呼称を一律に「経営企画室」と変えています。


経緯の詳細は知りませんが、おそらく元々の事務室のイメージを払拭し、
(TVドラマとかでありますよね、先生のお茶汲みとかやっているようなイメージ)
より学校の経営や企画の仕事に参画していくようにという意図を込め、
今までのイメージを一変させる経営企画室というネーミングをつけたのだと思います。


自分の感覚でもかなり思い切ったネーミングだなと思います。
経営企画室なんて組織の中枢にある部署につける名前であって、
雑務を担当する事務室が冠する名前でないよ、みたいな。

ただ一方で、学校運営のあり方をそれくらい思い切った形で変えていかねば、
という意図の表れのようにも思います。


この辺個人的にも結構関心がある話で、
この辺テーマに勉強会を組んだこともあったり。
http://d.hatena.ne.jp/scoolforsaitama/20101223/1293111753

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でその後私は学校現場をサポートするような職場に異動し、
今は少し俯瞰した立場から学校経営に、教育行政に携わっています。


そこで何を感じるかというと、
やはり学校現場に権限を移譲したほうがよいよねってことです。


突き詰めればかなり複雑で
私の頭のレベルではこんがらがってしまう話なのですが、
すんごくシンプルにまとめてしまえば
・決められたルールに従うべきこと
・自分たちでルールを決めるべきこと
の2つをどう精査していくかって話だと思います。




あ、違う、川内君の話でした。


彼も今3年目なので、来年異動の可能性があります。
県職員として勤務を続けるのであれば
いかに働きながら練習時間を確保するかが至上命題なわけなので、
さぞかし人事担当も頭を悩ましているものかと思われる。
ある意味トップダウンでその辺は決まりそうだから逆に楽かもですが。


教育委員会は知事部局から独立しているという名目の元、
内定者の集いという(秋くらいだったかな)内定者の集まりの段階から
知事部局配属の人とは別に集められ、
4月1日入庁式も教育局配属の人間だけ別室で辞令交付式。
知事には一度もお会いしたことがありません。


教育行政の独立云々は今ホットな話題ではありますが、
川内君の活躍はそこら辺すっ飛ばして
彼が「埼玉県庁」と胸に書かれたユニフォームを着て活躍している姿を見ると
(根拠の規則とか押さえてませんが、たぶん厳密に言うと彼は県庁職員ではなく、
教育委員会の職員でもなく、今は学校事務の職員という立場。学校以外に異動後はもちろん変わりますが)
何かが大きく変わるときは突出した個人・出来事なりが出てくるときなのかなと改めて実感します。


個人的には、今後も彼が県行政にもかかわり続けながら
ランナーとして飛躍していきたいという意向があるのであれば、
彼にしかできない仕事(スポーツ行政の企画面から関わるとか、マラソン大会の企画・PRとか)を
練習時間が確保できる範囲である程度特別に用意し、
彼の県庁職員としてのキャリアをある程度特別に整えてあげてよいのでは?と思います。
それに相応しいくらいの価値を埼玉県に提供してくれているわけだし。


ラソン選手としてのピークが年齢的にどれくらいに来るものなのかは素人なもので全然わかりませんが、
配属部署でどんな仕事を持たせるかも、今後のキャリアを見越しそれに最大限配慮したものであるべきかと。


なにか今さっき述べたことと一見矛盾するようではありますが、
例えば彼の知名度ばかりに依拠してそれに特化した特殊な仕事ばかり仮に持たせてしまい
彼の年齢で学んでおくべき県での仕事の基礎がおろそかになってしまうようだと、
キャリアの土台ができず長期的に見て彼に不利になってしまうからです。
(あれくらいストイックで、あれくらい一つのことに集中して結果が出せる彼なら
すぐにキャッチアップできるような気も一方でしますが)


組織に多くの価値を提供し、今後も提供していくであろう個人に、
県は組織としてどういった形で柔軟に、的確な形で応えてあげることができるのか。
市民ランナーならずとも、興味深いところです。